売春
売春(ばいしゅん)とは、金銭などの対価を目的にし、異性と性行為を行うこと。同性の場合もこれに該当する。かつては「売笑」「売娼」「売淫」とも呼ばれた。売春に従事する女性は古来娼婦、売春婦と呼ばれる。日本の娼婦の歴史は遊女の項を参照。売春は有史以来のあらゆる社会に存在し、男性の売春も同様だったとされる。売春に従事する男性については男娼の項を参照。
目次 |
売春の歴史
世界史における売春
売春はおそらく人類の発達の非常に初期の段階から存在しただろうとされ、このため人類最古の商売とも言われる。未開社会でも売春とみなされていた男女関係は見られる。しかし社会の認識の違いや、乱交と売春のみわけがつきにくいなどの理由により、売春の起源ははっきりしない。
厳密性は別として、聖職者、助産師、医師、盗賊、傭兵等とともに、「人類最古の職業(the oldest profession)の1つ」とよくいわれる。
日本史における売春
日本もまた売春は古来歴史上に顔を見せている。特に室町時代における集娼制度、江戸時代の吉原遊郭の開設など、公認された遊郭のもとに売春は公然と行われていた。明治になって、人権思想の流入とともに廃娼運動が起こるが、対抗もあり売春が減少することはなく、ますます繁栄をみた。
戦後、売春防止法が昭和31年5月に公布、33年4月1日に完全施行された。
女性
日本の娼婦(遊女)には古来数多くの呼称があり、古く『万葉集』には、「遊行女婦(うかれめ)」の名で書かれている。 中世には、「傀儡女(くぐつめ)」や「白拍子(しらびょうし、はくびょうし)」「遊女(あそび)」「傾城(けいせい)」「上臈(じょうろう)」などと呼ばれていた。その他「女郎(じょろう)」、「遊君(ゆうくん)」、「娼妓(しょうぎ)」という呼称もある。特に古代から江戸時代前期においては、女性芸能者を兼ねる者、高い芸事や教養を兼ね備えたものも多かった。 出雲阿国歌舞伎なども売春婦である。江戸時代女性による歌舞伎が規制され、野郎歌舞伎へと変遷した理由の一つである。
遊女屋が権力の統制と保護を受け、遊郭として1箇所に集められたのは近世(安土桃山時代)以降のことである。
明治維新の後、1872年(明治5年)、マリア・ルーズ号事件が発生。ペルーの汽船が横浜港外に碇泊した際、船内における中国人苦力に対する奴隷扱いに対し、「虐待私刑事件」として日本の外務省管下で裁判を行った。裁判中、被告船長ヘレイラの代言人の申し立てのなかで、「日本が奴隷契約が無効であるというなら、日本においてもっとも酷い奴隷契約が有効に認められて、悲惨な生活をなしつつあるではないか。それは遊女の約定である」と、遊女の年季証文の写しと、横浜病院医治報告書を提出した。特命裁判長だった神奈川県権令大江卓は「日本政府は近々公娼開放の準備中である」と公娼廃止の声明を世界に誓約する(吉見周子著『売娼の社会史』より)。1872年10月2日、芸娼妓解放令が出された。遊女の人身売買の規制などを目的とした法令だが、準備期間が全くないまま唐突に発せられた点は否めず、法令としてはあまり機能しなかった。
男性
男娼もまた古くから歌や踊りを披露する芸人の中に存在している。能役者や歌舞伎役者が江戸時代までそれを行っていた。ただし寺院の稚児や、武士のあいだの男色の相手は、売春ではないとされる。人身売買が公然と存在した中世には、売春のための稚児の少年を一夜売る商売も存在した。何種類もの形態で遊女が登場したように、男娼の世界においても、陰間茶屋の高級色子から、地方まわりの男娼芸人に至るまで、多様な姿で売春が展開していた。日本では男娼という言葉は戦後小説「男娼の森」などをきっかけに広がった。同性間では売春防止法は適用されないため、現在でもゲイ雑誌などでは堂々と売春を持ちかける投稿が少なからずみられる。
女衒
女性を買い付けて遊郭などに仲介する女衒(ぜげん)は、古くから存在している。
日本では19世紀後半(明治)以降、数多くの女性が女衒の斡旋により日本の農山漁村から東アジア・東南アジアなどの海外に渡航し、遊郭で働いた。女衒として特に有名な人物に、村岡伊平治がいる。また、こうした海外渡航した女性たちはからゆきさんと呼ばれた。
20世紀以降は、当時日本領となっていた朝鮮や台湾からも数多くの女性が、女衒の斡旋で日本軍兵士を相手に売春していた。女衒には軍属の者もいた。(詳しくは慰安婦を参照)
第二次世界大戦終了後に政府が公娼制度を廃止すると、それと同時に女衒も表向きは自然消滅したとされている。また刑法でも、女衒行為に対する処罰規定がある。
売春防止法
日本では売春防止法第3条により売春は禁止されているが、売買春自体に罰則は設けられていない。但し、対価の下に性交渉を持つ場合でもそれが“特定の相手”(愛人等)なら禁止されない。(「『売春』とは、対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交すること」(同法2条))
売春防止法において、売春行為自体は禁止されていても、刑事処分の対象とはならない。 (地方条例において指定される、18歳未満の者に対する児童買春行為を除く)
同法が刑事処分の対象としているのは、
- 売春勧誘(同法5条1号)
- 売春の周旋(同法6条1項)
- 売春をさせる契約(同法10条1項)
- 売春をさせる業(同法12条。俗にいう「管理売春」は、これに含まれる。)
などの売春を「助長」する行為である。
18歳未満の者との間で行われる児童買春(買う側の行為)を除き、売春行為そのものを刑事処分の対象としないのは、日本の法理論においては国民の風習として根付いたものを法で過度に制限すべきではないとする原則があるからである[要出典]。交際の相手方ないしは交際を望む相手方に対するプレゼントや食事の提供は日常しばしば見られる行為であり、多数の友人との性交を伴う交友をする者を売春行為をしたとして処罰することにもなりかねず、個人の性生活を極度に制限してしまう恐れがあるからと考えられる。そもそも立法の経緯としても、女性の性的役務の隷属被害や、暴力団等や親による搾取行為を無くすのが主目的で、売春行為自体を取り締まる事が主目的ではなかったためである(参議院委員会議事録より)。理論上も女性の性や権利を守るための法律と解されているケースがよくある。
売春『禁止』法ではなく、売春『防止』法と銘打っているのもそのためとされる。
なお、性交類似行為(フェラ、素股、アナルセックスなど)は、売春防止法にいう性行為に当たらない。子供ができる可能性が低いからと説明されているが、避妊をしての性行為は売春に当たる[要出典]。 なお、第2条の定義に該当する性交である限りは、男女の性別を問わず売春となる(最決昭37・12・18刑集第16巻12号1713頁)。
買春
対償を与え、もしくは与える約束で性交を行うことを買春(かいしゅん)と呼ぶようになってきた(1990年代以降)。売春と買春を合わせて「売買春」(ばいばいしゅん)と呼ぶこともある。
音読みでは「ばいしゅん」となるが、これは1970年代から1980年代にかけて、日本人男性による韓国や台湾、タイ、その他の東南アジアへの「セックス・ツアー」(買春ツアー)激増がマスメディアによって報じられ、それに対する告発によって生まれた造語である。とりわけ、少女を対象にした「買春」は大きな問題となった。
当初は「買春」も「売春」も「ばいしゅん」と呼んでいたが、両者を区別するため、「買春」に対して本来は誤りである湯桶読みの「かいしゅん」が多用されるようになった。近年ではアナウンサーの発音や、国会議員の答弁などにおいても「かいしゅん」の読みが使われるようになっている。国語辞典などにも「かいしゅん」の読みが採用されるようになってきた。
ただし一つ間違えると「回春」になってしまうという問題もある。なお中国語では「売春」と「買春」は声調が異なるために区別可能。
他に、客側を指し「買春者」の用語を使用することがある(援助交際などに関わった容疑者、被告等に使うことが多い)。
日本の売春の現状
現在、売春自体は違法ではあるものの、罰則規定はない。売春の斡旋は罰則の対象となっている。しかし、18歳未満の者との間で行われる児童売春を除き、事実上黙認され、斡旋ではなく、知り合った男女が売春しているにすぎないという建前のソープランドでは公然と売春が行われている。旧赤線地帯などでは、ソープランドのような風呂を設けずに個室で売春させている所も多く、ファッションヘルスなどにおいても、店が売春を黙認している所もある。売春が行われている所はこれだけに限らず、ホテトルやテレクラも同様で、ファッションホテル近くの風俗街で立ちながら娼婦を紹介する女や娼婦本人が客を待っている場合もある。また最近では携帯電話やパソコンの交際サイトも同様である。いずれにしても法規制を逃れるため斡旋行為は暗黙の了解となっており、斡旋行為があると公然と了解はしない。つまり店から見れば契約外の行為とすることが出来るわけである。
ソープランドその他では、料金の支払いは時間制によって行なわれる。
児童相手の買春行為
18歳未満の相手と売春・買春行為を行った者は、かつては地方自治体の定める青少年保護育成条例の淫行処罰規定(淫行条例)違反で逮捕・処罰されていたが、1999年以降は児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反で逮捕され「五年以下の懲役又は三百万円以下の罰金」という厳しい処罰と懲戒免職・解雇等の社会的制裁を受け、しばしばマスコミで報道されている(援助交際参照)。
なお、児ポ法においては、売春をした本人(児童)を取り締まる規定はない[1]。また、売春防止法においても、売春をした本人(娼婦)を取り締まる規定はないとする意見もある[2]。
日本国内の外国人売春
2009年には韓国の業者が同性愛者の韓国人男性をインターネットで募り、不法に日本で売春を行い暴力団などに上納したなどとして韓国で検挙される例があり、海外からの違法な売春者が流入していることが明らかとなっている[3]。2009年7月15日には、韓国の求職サイトで「海外の風俗店で働くと月3000万ウォン以上を稼げる」との広告で高校生を始めとする若い女性達を募り、100人余りを日本などに送り込んでいた韓国人親子ブローカーが摘発されている[4]。
世界の売春事情
現在、世界的に売春は合法化の流れがあるとされる(2009年7月7日読売新聞)。アジアでは、タイで完全に合法化され、台湾でも合法化が検討されている(同日読売新聞)。欧米では、売春自体は合法である国がほとんどである。ただ、斡旋を違法としている国も多い。しかし、2000年にオランダが斡旋を含む売春行為を完全に合法化したのを皮切りに、ドイツ、オーストラリア、ニュージーランドなども斡旋合法化に踏み切っている。以下、詳述する。
アジア諸国の事情
タイや中国などアジアでは、現在でも、特に地方での貧困から、少女・少年が都市部の闇で売春をするケースが多いといわれ、エイズなどの性病が蔓延し、大きな社会問題となっている。タイでは、性病の蔓延を防ぐため、衛生管理を徹底し、かつ税収を確保する目的で昨今、国の許可の下での管理売春が合法化された。ドイツでは斡旋を伴う売春を完全に合法化し、売春地帯を一定の場所に隔離し、政府が性病管理をすることによって性病が減少したとされており、ドイツを参考にしたといわれる。
台湾の事情
台湾で売春は「社会秩序維護法」により禁じられ、違反者は3日以内の拘留か3万台湾ドル(約9万円)以下の罰金が科せられる。ただ、暴力団組織が関与する売春業は全土に広がっているとされる。しかし、2009年7月7日読売新聞によると、現在、特定の場所での管理売春を合法化する案が検討されている。ドイツのように国が管理することにより性病の蔓延を予防し、かつ、性犯罪を予防することを目的とする。劉院長(首相)が発表した方針は、同法を改正して売買春を合法化、さらに「成人性工作管理法」制定で売春を免許制にし、定期健診を義務づけ営業地域も限定する内容だ。台湾大学の王雲東・助教授は、「合法化は世界の潮流。成人女性が自分の判断で選ぶのなら、問題はない」と理解を示す。これに対し、女性人権団体「婦女救援基金会」は大反対している(2009年7月7日読売新聞)。
北朝鮮の事情
北朝鮮における売春を参照。
韓国の事情
韓国では、売春業の規模が2003年時点で24兆ウォン(約2兆4000億円)でGDP比で約4%、20歳以上の韓国女性の25人に1人が娼婦であるという調査結果を韓国の刑事政策研究院は公表した[5][6]。 また、外国人女性を騙して入国させ、監禁の上で売春を強要する事件まで行った[7]。
このような状況から韓国政府は2004年に売春行為を厳しく取り締る「性売買防止法」を施行したが、この法の施行にあたり、約3000人の売春婦が集まり「売春をさせろ」「生存権を保証しろ」とのデモがおこなわれ、その後も規制により生活が苦しくなった売春婦たちのデモが各地で発生するに至っている[8]。韓国内の規制が厳しくなったことで、日本や米国をはじめとした海外へ「遠征売春」をしに出かける韓国女性が増加しはじめ[9]、韓国政府関係者によると日本で働く売春婦は3万人にのぼるとされ、それを追いかけて韓国人ホストも毎月100人以上が日本へ上陸していることが伝えられ[10]、米国ではロサンゼルス警察局の関係者によると、毎月逮捕される売春女性のうち、9割が韓国人であることが伝えられ[11]、韓国の売春事情は海外にも影響を及ぼしている。
海外で売春をする韓国人は、米国では売春宿に「東京サウナ」[12]、「東京ヘルス・スパ」[13]などの店名を付けたり、オーストラリアでは韓国人売春婦らが「日本人女子大生18歳、(中略)紳士求む」という新聞広告を出して逮捕されたりと[14]、日本人に成り済まして売春行為を行っている姿が見られる。
また、近年増加してるのが、韓国男性のアジアでの買春ツアーである。「児童買春」を目的に東南アジアなどを訪れる韓国人男性や、中国へのゴルフツアーの際に買春行為している姿など、数多くの報道がなされるようになった[15]。 欧米諸国は、国内の売春を合法化し、自分達の国民の性欲は国内で処理してきた。そのため、国内で売春を違法とし、世界中で性欲を処理している韓国人の行動に対して、自分勝手だとの非難が生じている。
中国の事情
中国では売春は違法である(後述のように合法化が検討されている)。しかし、中国ニュース通信社の発表によると国内の売春婦の数は2000万人にのぼるといわれており、彼女達の総収入額は8兆円にのぼるといわれる。その多くは、貧しい農村の出身である。中国の農村は非常に貧しく、過酷な生活が続く。そのため、農村における女性の自殺者数は世界一多いといわれる。したがって、農村での生活よりも都市部での売春に従事する方が豊かな生活を送ることができるため、都市部に出稼ぎに来て、売春に従事する女性が多い。 売春の組織的斡旋には死刑が適用されるほど重い罪となっている。しかし、貧富の格差が原因となっていることから、売春の根絶は困難となっている。中国ニュース通信社の報道によると、ある地方都市で売春婦の一斉摘発を行ったところ、売春婦達が一斉に銀行から預金を降ろし、取り付け騒ぎに発展した。そのため、市政府側が降りて、彼女達は釈放され、無事商売に復帰できることになったという。ちなみに、お客さんとして最も人気があるのは韓国人男性であるという。その理由は、「女性に優しく対等に扱ってくれるから」だとか(レコードチャイナ2008年1月2日記事参照)[16]。 近年、中国でもエイズは大きな問題となっており、全人代で管理売春の合法化が検討されている。現在のところ、すぐに合法化に至る様子はないが、ネット上の世論調査では64%の中国人が国が管理するために合法化もやむをえないとして、賛成している[17]。
ミャンマーの事情
ミャンマーにおける売春を参照。
カンボジアの事情
売春に対する扱いは非常にあいまいである。しかし、カンボジアの首都プノンペンのルッセイ=カエウ区チローイ=チョンヴァー町刑事警察のユアン=チャンター副署長は2009年1月26日、男性がお金で性交を買うことは非合法ではないとの見解を示した。オーストラリア人男性が金銭の支払いで売春婦ともめていたところ、警察が調停に入った。この調停は非合法なのではないのかとの議論が起きたときに、警察関係者が売春が合法であるとコメントしたのだという[18]。
モンゴルの事情
モンゴルを訪れる韓国男性の70%以上が売春ツアーを目的としている[19]。韓国人が経営する売春目的のカラオケバーが確認されているだけで50件以上にのぼり深刻な問題となっている[19]。モンゴル政府は韓国人による売春ツアーを取り締まるために売春取締法を強化しているが韓国人の経営する売春目的のカラオケバーの活動を弱めることができていない[19]。また、取締りを逃れるために乗馬クラブやマッサージ店での売春が増加している[19]。空港を降りるとそのまま売春乗馬クラブに直行する姿などが垣間見られる[19]。韓国人の無法行為によってモンゴル人に強い嫌韓感情を引き起こしている[19]。
インドの事情
売春自体は禁止されていない。しかし、客引きは違法とされる。売春に関しては非常にあいまいな扱いがなされている。そのため、売春に従事する女性達は法的な保護を十分に受けられない環境にあり、過酷な環境下で労働しているとされる。そのため、2007年に、インド最大の売春婦支援団体「Committee for Indomitable Women」が売春婦を法律上の「接待業者」として扱うように政府に要求する集会を開いている[20]。
オセアニア諸国の事情
キリバスの事情
キリバスでは、韓国人による幼女買春が問題となっている。キリバス人は性が乱れた人たちをコレコレアと呼んでいる。また、韓国人は、現地の女性を自分たちの船の甲板や、薄暗い防波堤の後ろに連れて行き買春を行うので、防波堤の物陰のこともコレコレアと呼ぶ。韓国人の買春行為に対して、議会では対策会議が開かれており、市民団体や教会までもが行き過ぎた性売買を減らすための方法を探っている。韓国人男性の子どもを妊娠した幼い少女たちやその父親不明の混血児たちもキリバスの社会問題となっている[21]。
オーストラリアの事情
オーストラリアでは売買春そのものは合法である。組織・施設・勧誘行為の規制は州により異なる。売春が合法化されている州では、一部上場している売春宿もある。 その合法化を推進したのがキャンベラの女性市長である。売春を違法にしたところで、貧しい人達がいる限り売春は無くならないし、「モラルを押し付けておきながら、福祉を充実させずに貧しい生活を甘受せよというのは金持ちの身勝手である」との反発もあり、合法化した。合法化したことで、売春に従事する女性達は社会保障を受けることができ、また賃金を不当に踏み倒されることもなくなり、また衛生管理も向上する。そういった点で、女性議員達の支持をうけたのが、合法化に成功した理由といわれる。同様の理由でニュージーランドでも合法化された。
ニュージーランドの事情
オーストラリアと同様の理由でニュージーランドでも合法とされた。ただし、合法的に売春するには、ライセンスを受ける必要があるとされる。
ヨーロッパ諸国の事情
オランダの事情
2000年に売春が完全に合法化され、一般の企業と同様の活動が可能となった。 オランダのアムステルダムなどの主要都市に売春宿(隠語で「飾り窓」と呼ばれる)や街娼(隠語で「立ちんぼ」と呼ばれる)が多数存在し、毎日朝から深夜まで料金等の交渉が行われている。脅迫などにより売春を強要される女性がいると指摘されていることから、近年売春強制の罰則が強化されている。これに対し、移民は仕事を確保することが困難であり、自らの意思で売春に従事する人が多いといわれる[22]。デンマーク、フランス、スイス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、チェコなどにおいても合法で、オーストリアなどでは外国人が働くために売春ビザで滞在許可を得ることができる。
ベルギーの事情
従来から売春自体は合法だったが、斡旋行為等は違法とされていた。しかし、ドイツ、オランダの合法化に伴いベルギーにおいても斡旋行為、売春宿の経営等が合法化された。
イギリスの事情
イギリスでは売春すなわち「性的なサービスの代価に金銭を受け取る」こと自体は合法であるという判例がある。しかし法律的には、街娼、ポン引き、売春宿および売春組織の形成は違法である。したがって、個人が新聞やインターネットで広告を出し売春をすること (Independent Escort) は完全に合法である。これに対し、Escort を派遣するいわゆる Escort Agency や、日本のソープランドのようにマッサージと称して売春するマッサージパーラー(Massage Parlour)は、違法ではないかとの指摘があるが黙認されている。
スイスの事情
スイスでは売買春は合法とされている。自治体に登録することで、営業することが可能となる。EUの自由化により、外国人売春婦が増えているとされる[23]売春合意年齢は16歳であることから、現在高校生であっても売春が可能である。ただ、高校生がブランド品を買うために体を売る「ブランドセックス」が問題視されており、売春合意年齢を18歳に引き上げるべきであるとの議論がなされている。なお、イタリアやフランスの売春合意年齢は18歳、ドイツは21歳であり、スイスは特に若いことが指摘されている[24]。
フランスの事情
売春は合法である。ただ、斡旋や公道での勧誘は違法である。売春合意年齢は18歳である。フランス在住のジャーナリストである鎌田聡江氏によると、近年、女子学生が生活費を稼ぐために売春するケースが増えているとされ、その数は4万人にのぼるといわれる。彼女達の多くは貧しい家庭の出身であり、社会的な成功を夢見て勉学に励んでいる。しかし、労働法令により、労働者の解雇が困難なフランスでは、労務者の数を少なく抑えようとする傾向があり、バイトを探すことが困難となっている。そのため、彼女達が勉学を続けながら収入を得ることは難しい。その上、パリでの生活費は一般的に高いといわれる。それが、インターネットを利用した売春が女子学生の間で流行している原因であるとされる[25]。
ドイツの事情
2002年に売春が合法化された。売春合意年齢は21歳とされている。現在、ベルリンだけでも700もの売春宿があり、売春婦の数はドイツ全土で40万人といわれる。合法化したことにより、「セックス税」が得られるようになったとされる。また、ドイツW杯時には大きな売り上げをあげたとされる[26]。 ただ、経済不況の波はドイツの売春産業にも大きな影響をあたえており、価格が低下しているといわれる[27]
オーストリアの事情
売春は合法である。路上や店舗で活動するためには営業免許証が必要とされる。海外からの移住性労働者のための滞在ビザ、つまり売春ビザもある。売春ビザで働いている場合、売春以外の職種(ダンスショーなど)に従事することも裁判で認められた。
イタリアの事情
1958年に売春防止法が施行された。ただ、売春行為自体は適法であり、売春合意年齢は18歳である。売春の斡旋や売り込みなどは違法とされている。ただ、後述するように特定の地域での売春斡旋や売り込みの合法化が現在検討されている。現在、イタリアには売春婦が7万人いるとされており、その多くが外国人である。2008年6月8日のロイターによると、イタリア政府は政府公認の売春公認地域、いわゆる「赤線地帯」の設置や売春合法化を検討しており、8割の国民が賛成しているとの世論調査結果が出ている[28]
スペインの事情
売春は合法とされる。多くは、貧しい移民達が生活費を稼ぐために売春に従事している。ただ、売春宿の経営については、規制が設けられており、新規出店は難しい。そのため、マッサージ店に偽装する店が多いとされる。
デンマークの事情
1999年の刑法改正により、18歳以上の売春は完全に合法化された。もっとも、同年以前より、事実上黙認されていたといわれる。いわゆる、街娼は少ないとされ、多くはサロンやマッサージ店のような場所で売春が行われている。売春婦は約6000人おり、3割が外国人であるといわれている。
ギリシャの事情
売春は合法である。しかし、街頭での客引き等の行為は違法とされており、規制も厳しいといわれる。売春宿を経営するためには、市の許可が必要となる。アテネ五輪の際に、五輪特需を見込んで、アテネ市が230件の売春宿の新規許可を出したことに対して、北欧諸国から五輪の精神に悖るとして非難が起きた[29]。
チェコの事情
チェコでは売春、売春宿の経営は合法である。チェコのEU加盟により、従来最大で24時間近く待たされた国境通過が容易になったとされる。そのため、トラックドライバーを主な顧客とするオーストリア国境地帯の売春宿の多くが廃業したといわれる。
北アメリカ諸国の事情
アメリカの事情
アメリカ合衆国では国家レベルでの全面禁止はされず、州の裁量に任されているが、ネバダ州以外では禁じられている。ネバダ州でも一部の許可地域以外では禁じられている[30]。近年は、韓国女性が米国まで「遠征売春」をしており、米中部内陸まで広がっていることが伝えられている。ロサンゼルス警察局の関係者によると、毎月逮捕される売春女性のうち、9割が韓国人であるとしている[31]。また、サンフランシスコでは、売春取締りにかかる費用が莫大な額に上ることから、費用節約の観点から、女性の意思に基づく売春であれば事実上黙認するとの運用が検討されている。
カナダの事情
カナダにおける売春も参照。
売春それ自体は適法である。しかし、売春禁止法により、斡旋行為や売春宿の経営、売春で生計をたてることは違法とされている。そのため、成人の女性がバイトで単発的に行う売春のみが合法とされる。ただ、実際は斡旋行為等は事実上広く行われているとされる。カナダのHIV/AIDSの法律家ネットワーク Legal Network は、2005年12月13日、この法律がセックスワーカーの健康と生命を脅かしており、廃止するべきだとする報告書を発表した。これをうけ、下院議員リビー・デーヴィス Libby Daviesを中心にこの問題についての議論が継続されている[32]。
南アメリカ諸国の事情
チリの事情
売春は合法である。実際には、目立たない形で広く行われている。 性風俗業はいくつかの形態で存在している。 一つ目は一種の高級バーである。ホステスを連れ出し、セックスをする。ラス・コンデスやビタクラといったサンチアゴの振興地区にあり、主に外国人観光客を相手としている。チリ人が利用することは少ないといわれる。 二つ目はSAUNAといわれるもので、アパートの1室で売春を行うものである。一流紙にも目立たないような内容の広告が出されるほどメジャーなものであり、外国人のみならず、一般のチリ人も利用する。 三つ目は街娼である。 売春婦の多くは、売春しか生活の糧を稼ぐ手段がない貧しい層の女性であるといわれている。 2007年には、同国最大の募金活動で、チリの売春婦であるマリア・カロリナがチャリティーのために「27時間の性行為」をオークションに出品し話題となった[33]。
ブラジルの事情
ブラジルでは売春は合法である。しかし、売春の広告を出すことは違法であるとされる。 売春婦はプータと呼ばれ、貧民層出身の女性が生活費を稼ぐために仕方なく売春を行っているケースが多い。
メキシコの事情
メキシコでは売春は違法である。しかし、放置されており、事実上黙認されている。ロイター通信によると、メキシコ国境付近の町ティフアナでは、条例により売春婦に保険証を交付したり、売春宿の衛生管理に市が介入することを認めた。メキシコではこうした例が多いため、事実上売春は合法であると指摘される[34]。
動物行動学と売春
売春は、人間だけでなくチンパンジー等霊長類にも見られる行為である事がフィールド・ワークによって判明している。さらに昆虫程度の生物にも同様の生態が見られる。
しかし、動物行動学の研究者たちの「いくつかの高等な霊長類のなかで売春行為がみられる」との報告に、異論を唱える研究者もいる。論争の元となっているのは、霊長類のメス(や若いオス)が餌をもらったお礼に、あるいは相手の攻撃をかわすために、性的サービスを提供するという事実である。学術用語では、これを「プレゼンテインション」という。この行動が売春といえるかどうかは、その定義にかかっている(『売春の社会史-古代オリエントから現代まで』より)。
売春を扱った作品
売春を扱った作品の一覧を参照。
脚注
参考文献
参考文献 (売春)も参照。
- 1964年
- ジャン=ガブリエル・マンシニ著(寿里茂訳)『売春の社会学』(文庫クセジュ)、白水社(原著:Jean-Gabriel Mancini, Prostitution et proxénétisme, 1963.)、ISBN 4-560-05357-X
- 1986年
- 総理府編『売春対策の現況』、ぎょうせい、ISBN 4-324-00450-1
- 1991年
- ヴァーン・ブーロー、ボニー・ブーロー著(香川檀・岩倉桂子・家本清美訳)『売春の社会史-古代オリエントから現代まで』、筑摩書房(1996年に文庫本で再発)(原著: Vern Bullough, Bonnie Bullough, Women and Prostitution: A Social History, Buffalo, N.Y., Prometheus Books, 1987.)、ISBN 4-480-85573-4(文庫版は ISBN 4-480-08292-1(上巻) ISBN 4-480-08293-X(下巻))
- 1992年
- 小林大治郎・村瀬昭著『国家売春命令-みんなは知らない』、雄山閣出版(初版は1961年)、ISBN 4-639-01133-4
- 1993年
- フレデリック・デラコステ、プリシラ・アレキサンダー編『セックス・ワーク-性産業に携わる女性たちの声』、パンドラ(→中野理惠)(原著:Frédérique Delacoste, Priscilla Alexander ed., Sex Work: Writings by Women in the Sex Industry, 1987)、ISBN 4-7684-7725-9
- タン・ダム・トゥルン(田中紀子・山下明子訳)『売春-性労働の社会構造と国際経済』、明石書店(原著:Thanh Dam Truong, Sex, Money, and Morality: Prostitution and Tourism in Southeast Asia, 1990.)、ISBN 4-7503-0531-6
- 1994年
- 山田勝著『ドゥミモンデーヌ : パリ・裏社交界の女たち』、早川書房、ISBN 4-15-050180-7
- 1995年
- 井上節子著『占領軍慰安所-敗戦秘史 国家による売春施設』、新評論、ISBN 4-7948-0269-2
- 福島瑞穂・中野理恵著/パンドラ編『買う男・買わない男』、パンドラ、ISBN 4-7684-5578-6
- 森栗茂一著『夜這いと近代買春』、明石書店、ISBN 4-7503-0750-5
- 1996年
- いのうえせつこ著『買春する男たち』、新評論、ISBN 4-7948-0328-1
- クリスタ・パウル著(池永記代美・浜田和子・梶村道子・イエミン恵子・ノリス恵美訳)『ナチズムと強制売春-強制収容所特別棟の女性たち』、明石書店(原著:Christa Paul, Zwangsprostitution: staatlich errichtete Bordelle im Nationalsozialismus, 1994.)、ISBN 4-7503-0804-8
- 1997年
- 総理府編『売春対策の現況』、大蔵省印刷局、ISBN 4-17-351000-4
- 田崎英明編著/金塚貞文・小倉利丸・菅野聡美・千本秀樹・渡辺里子著『売る身体/買う身体-セックスワーク論の射程』、青弓社、ISBN 4-7872-3137-5
- 谷口和憲著『性を買う男』、パンドラ、ISBN 4-7684-7782-8
- 藤井誠二著『18歳未満『健全育成』計画-淫行条例と東京都「買春」処罰規定を制定した人々の野望』、現代人文社、ISBN 4-906531-39-3
- 1999年
- Sexual Rights Project 編『買売春解体新書-近代の性規範からいかに抜け出すか』、つげ書房新社、ISBN 4-8068-0418-5
- 2000年
- 要友紀子・小林のん・滝波リサ・国江響子・佐藤悟志著/松沢呉一・スタジオポット編『売る売らないはワタシが決める-買春肯定宣言』、ポット出版、ISBN 4-939015-24-6
- 吉田秀弘著『日本売春史・考-変遷とその背景』、自由社、ISBN 4-915237-23-0
- 2001年
- シャノン・ベル著(山本民雄・宮下嶺夫・越智道雄 訳)『売春という思想』、青弓社(原著:Shannon Bell, Reading, Writing, and Rewriting the Prostitutive Body, 1994.)、ISBN 4-7872-3182-0
- 鈴木水南子・角田由紀子・村瀬幸浩・草野いづみ著『買春と売春と性の教育』(Human Sexuality トーク&トーク 2)、十月舎、ISBN 4-434-00775-0
- 近代国家と大衆文化研究プロジェクト『近代社会と売春問題』(『産研叢書』16)、大阪産業大学産業研究所、2001年3月。
- 2002年
- アレクサ・アルバート著(安原和見訳)『公認売春宿』、講談社(原著:Alexa Albert, Brothel: Mustang Ranch and Its Women, 2001.)、ISBN 4-06-211498-4
- 岡野幸江・長谷川啓・渡辺澄子編『買売春と日本文学』、東京堂出版、ISBN 4-490-20457-4
- 2004年
- 梁石日著『闇の子供たち』幻冬舎文庫 ISBN 4-344-40514-5 (タイが舞台)
- 未邦訳
- Nestor Osvaldo Perlongher, O negocio do miche, prostituicao viril am Sao Paulo, 1.a edicao, editora brasiliense, 1987.
- John Preston, Hustling: A Gentelmen's Guide to the Fine Art of Homosexual Prostitution, New York, Masqueade Books, 1994.
関連項目
- 水商売
- 娼婦
- 風俗嬢
- AV女優
- 遊女
- 芸妓
- 妓生
- 舞妓
- ホステス
- 慰安婦
- 売春防止法
- 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(児童買春・児童ポルノ禁止法)
- 児童買春
- 援助交際
- 特殊慰安施設協会
- 廃娼運動
- 性的奴隷
- セックスワーカー
- 人身売買
- 性的虐待
- 売春ツアー
- 水揚げ
- プロヒューモ事件
- 売り専
- 被害者なき犯罪
- 切り裂きジャック
- ウライラット・ソイミー
- ジャネット・エンジェル
- ヒュー・グラント
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