韓国における漢字

漢字
各種表記
ハングル한자
漢字漢字
平仮名
(日本語読み仮名)
かんじ
片仮名
(現地語読み仮名)
ハンチャ
ローマ字転写Hanja
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韓国における漢字(かんこくにおけるかんじ、한자(ハンチャ))では、韓国で使用される漢字について総合的に説明する。韓国で使用される漢字のことを韓文漢字ともいう。これは、わずかな違いを除けば中国香港マカオ)・台湾繁体字(正体字)や日本旧字体とほぼ同じである。

朝鮮語の語彙には固有語漢字語があるが、現在の韓国では漢字語のみに漢字が使われる。ただし、その使用頻度は高くなく通常はハングルのみで表記される。その言語的な要因のひとつは、朝鮮漢字音が1音節であり、音節文字であるハングル1字で漢字1字を表記でき、ハングルのみの表記によっても字数が増えないこと、音節の種類が多く、同音異義語が比較的少ないからである[要出典]。漢字教育は世代によって異なっており、漢字を読めても書けない人が多い。

目次

字体

韓国では正体字(日本語のいわゆる旧字体、中国での繁体字)が使われている。ただし、その正字・異体字の認定には中国や日本と異なる場合がある。例えば、ペ・ヨンジュン裵勇俊)の「ぺ」は韓国では「」を正字とするが、中国・日本・台湾では「」を正字とし、「」を異体字としている。

民間で使用する略字については、韓国における略字を参考。

国字

韓国においても日本の国字に相当するものがある。韓国の国字は既に存在している漢字の音で表現できない音を表わすことが出来るように作られた文字、吏読などで使われた慣用句を書くため作られたもの、そして韓国の固有の文化の概念を表わす文字などで区分される。それ以外に既存の字に新たな音とか訓を付けて使用することもある。

漢字の下に乙の字が挿入された字は、「乙」がハングルの (/l/) に形が似ていることを利用し、既存の漢字(多くは意符になる)の下部に置くことで、その字音の音節末に /l/ 音を付加するという(結果、/l/ 音で終わる単音節固有語で読まれる)造字法が行われた。

新製の文字

国字ハングル表記意味
/dap/水田(韓国で田は畑の意味)
/si/夫の家
/jo/姓の一つ
/夻 /hwa/怒り
/bu/労務者(功夫の合字)
/nam/女性の男の兄弟
/tal/変事/病気
/hui/嬉しさ/長寿を祈ること(とは別)
/pyeon/
(「叱」は促音「ッ」) /ppun/…だけ/…まで

既存の字に固有の部分を添加

国字ハングル表記意味
(「石」の下に「乙」) /dol/石(人名字、例:李世乭
(「下」の下に「乙」) /hal/人名、地名のみに音を表わすため使われる字
(「沙」の下に「乙」) /sal/
(「甫」の下に「乙」) /bol/
(「加」の下に「乙」) /gal/
(「高」の下に「巴」) /gop/
(「斜」の下に「卩」) /san/
(「巨」の下にハングルの「」) /geok/
乺/(「所」の下に「乙」) /sol/ブラシ
(「老」の下にハングルの「」) /nom/者・ヤツ(接尾辞)
(「仇」の下に促音「叱」)굿 /gut/グッ(巫が神に供物を供え歌舞で祈り願う儀式)

既存の字に新たな音と訓

国字ハングル表記意味
/soe/鉄(人名字、元の意味はは力を尽くすこと)
旀/ /myeo/…ながら/…であって(元は弓を射ることの意味)

日本語の訓読みの熟語由来のもの

日本語朝鮮語ハングル表記
合気道合氣道합기도 (hapgido)
組立組立조립 (jorip)
建物建物건물 (geonmul)
見積り見積견적 (gyeonjeok)
株式株式주식 (jusik)
試合試合시합 (sihap)
取消取消취소 (chwiso)
手続手續수속 (susok)

朝鮮語独自の漢語

日本語にもある語については、日本語での意味も記した。

中国語日本語朝鮮語ハングル表記由来日本語での意味
催促催促促求촉구 ?促すこと
眞心真心精誠정성精誠所至, 金石為開真心を尽くすこと
爭論論争、論議論難논란 ?話し合う
中止中止、凍結霧散무산 ?
  • 中国語や日本語で使われる「催促」は朝鮮語では本来の音(최촉)では使わず、音変異した「재촉」として使われる。その意味は少し変わって「無駄に何度も催促すること」の意味である。
  • 「真心」は日本語での「本音」として朝鮮語では使われる。
  • 李氏朝鮮時代には「争論」も使っていた。今はわざと古語を真似する時に使われる。日本語の「論議」は朝鮮語では「討論、討議」の意味。

また、韓国においては、セクハラを「성추행」というが、これは「性醜行」を読んだものであり、近年においても漢字をベースに新しい単語が作られている例もある。

「文字戦争」

ハングル専用か漢字混用か。世論調査でも国論を二分している韓国にあっては政治家も争点にすることに難色を示す。独立以来続いているこの論争を、月刊朝鮮は「五十年文字戦争」(1998年当時)と名付けた[1]

李氏朝鮮時代には、漢字の知識の有無が知識人大衆を分け隔てる一線とされた。李朝末期に一部の民族主義団体がハングル振興運動を起こし(「ハン-グル(偉大な-文字)」という呼称もその当時に「諺文(オンモン)」という卑称から改められたもの)、日韓併合以降は民間のハングル学会などに引き継がれた。また、1886年には、朴泳孝ら開化派が発行し井上角五郎らが編集指導に加わった純漢文の新聞、「漢城旬報」の後を継ぎ、彼らによって、漢字とハングル混交文による初めての新聞、「漢城周報」が発行された。

日本統治時代には総督府の朝鮮教育令により週に数時間朝鮮語の授業が設けられ、その中でハングルも教えられたが、国語国字として扱われたわけではなかった。第二次世界大戦中には公教育におけるハングルの授業は中止され、1940年には朝鮮日報東亜日報は廃刊され、ハングルの新聞は毎日新報一紙のみとなった[2]

漢字教育の廃止

独立後は、日本統治時代に漢字を使用していたことや、中華帝国による古代からの冊封体制への不満といったナショナリズムの台頭により漢字を排斥[要出典]し、国語をハングルのみで表記しようとする機運が盛り上がった。1948年施行の「ハングル専用に関する法律」(略称:ハングル専用法)により、漢字廃止に法的根拠が付与される。「大韓民国の公文書はハングルで書く。ただし、当面の間、漢字をかっこに入れて使用することができる」が法律の全文だが、公文書の定義も当面の間の定義もなく、施行規則もなく、違反者に対する罰則規定もないこの法律は、法律でなく宣言文だと解釈する法律家もいる。

李承晩の時代には、小学校段階から漢字教育が行われたが、朴正熙は漢字廃止に傾斜を強め、1970年には漢字廃止宣言を発表、普通教育での漢字教育を全廃した。しかし言論界を中心に全廃への反対が強く、1972年には漢字廃止宣言を撤回し、中学校及び高等学校の「漢文」教育を復活させた。が、あくまで選択科目であり、受験にもほとんど関係がなく、実社会でもほとんど使用されない漢字は、学生らの学習動機を呼び起こさなかった。また小学校での漢字教育は禁止され、児童に個人的に漢字を教えた小学校教員は、国策に協力しない者として懲戒免職などの重い処分を受けた。

1980年代半ばから、韓国の新聞・雑誌も、次第に漢字の使用頻度を落とし始めた。漢字教育をほとんど受けていない世代(ハングル世代)が多数を占め、漢字を使用した出版物が売れなくなったためである。漢字の使用を禁止するのではなく、漢字教育を禁止することにより、一世代かけて漢字を緩やかに消滅させようとしたのがハングル専用派の狙いだった。実際、一漢字が一音節である朝鮮語にあっては、ハングル専用でも日本語における平仮名専用のように長くならないので、漢字廃止は可能かと思われていた。

漢字復活

しかし、朝鮮語の単語の大半は漢字語であるため[3][4]、ハングルで書かれた漢字語を文脈で理解するのは非能率的であり、また、抽象的な学術用語を漢字を念頭に置かずに正確に理解することは困難であるとの批判が起きた。このため、漢字を知らない世代がほぼ完成した 1990年代後半から、逆に漢字復活を求める声が勢いを増し、1998年に当時の大統領金大中が漢字復活宣言を発表した。この時、道路標識鉄道駅韓国国鉄はそれ以前から駅名表示は漢字併記であった)、バス停留所の漢字併記が大統領の指示で実現した。しかしハングル専用派の抵抗も根強く[要出典]、小学校での漢字教育義務付けや若年層での漢字使用日常化は実現されていない。このため現在、漢字の必要性を感じる韓国人は自己負担[要出典]で子供を漢字塾に通わせている。

ハングル専用派の主張は、従来「漢字語をなくすのではなく、漢字語もハングルで書こうと言っている」(中心はハングル学会)というものであったが、最近は「全ての学術用語を固有語に翻訳しよう」という内容に変わっている(国語純化運動)。漢字復活派が「漢字教育を確実に行えば、全ての学術用語は見ただけで理解できる」と主張するのに対し、ハングル専用派は「学問の内容全体を把握していれば、漢字を知らなくても学術用語の意味は理解できる」と反論し、一歩も譲る気配を見せていない。ちなみに、ハングル専用派も、中国四字熟語故事成語などは、漢字を知らなければ理解できないと認めてきた。また、賤出名将事件のように、漢字で書かないため結果として大きく異なる意味に取られてしまうケースもある。

2005年現在、李在田の死去により漢字復活運動の力が衰えたこともあり、ハングル専用派が巻き返しを見せている。同年1月に国語基本法が制定され、公文書における漢字のかっこ内使用は、大統領令が定める場合に限定されることとなった。それ以降、漢字混用の法律のハングル翻字が推進され、道路標識の漢字が中国人対象の簡体字に限定され、バス停留所の漢字併記も中止されている。しかし、その一方で2009年1月には、国務総理経験者20名が連名で「小学教育過程における漢字教育実施の建議書」を大統領府に提出[5]した他、国会議員の大部分も小学校段階での漢字教育導入に前向きな姿勢を示すなど[6]、漢字教育の必要性を訴える声が大きいのも事実である。

また、韓国人の中では国際競争力の面から漢字教育を肯定的にとらえる意見もある。漢字が読み書きできれば、中国とはもちろん、日本台湾シンガポールなどで筆談による意思疎通が可能[要出典]であり、東アジアでの共通文字である漢字を捨てることは国際競争力を弱めるという主張である。また、実際に国語能力の低下が業務能力における問題点として浮上してきており[7]、こうした観点から、就職試験に漢字を課したり、漢字能力検定試験合格者を優遇する企業が増えてきている。

国際漢字会議と漢字統一の動き

国際漢字会議は、韓国主導のもと1991年に初めて開催された。これは韓国、日本、中国、各国において異なる漢字の字体を統一しようと、常用漢字の字数を定め、字体の標準化を図ることが目的であった。しばらく大きな動きはないものの、2007年11月には北京で開かれた会議では、正字(香港や台湾の繁体字や日本の旧字体)を中心として、5000 - 6000字の字体を統一した「標準字」を定めていくことで合意したと報じられた[8]。但し、中華人民共和国教育部は「そのような事実はない」と否定しているとの報道もあった[9]

脚注

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関連項目

外部リンク

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