H&K MP5
MP5A3 新型ロアフレームモデル | |
| 概要 | |
|---|---|
| 製造国 | |
| 設計・製造 | ヘッケラー&コッホ社 |
| 性能 | |
| 銃身長 | 225mm |
| 使用弾薬 | 9mmパラベラム弾 |
| 装弾数 | 30発 |
| 作動方式 | クローズド・ボルト撃発 ローラー遅延式ブローバック |
| 全長 | 550mm(ストック展開時700mm) |
| 重量 | 3.08kg |
| 発射速度 | 800発/分 |
| 銃口初速 | 400m/s |
| 有効射程 | 200m |
H&K MP5とは、ドイツのヘッケラー&コッホ (H&K) 社がG3のバリエーションとして1960年代に開発した短機関銃(SMG)である。
MP5のMPとはドイツ語で短機関銃を意味する“Maschinenpistole”の略称である。
目次 |
開発の背景
G3ライフルのローラー遅延式ブローバック機構を元に、拳銃弾を使用する短機関銃(SMG)として開発されたのがMP5シリーズであり、銃身や銃床の交換によるモデルチェンジの容易さなど、共通の設計思想を持っている。
MP5 登場以前の短機関銃(SMG)は、携行性と信頼性は高かったものの命中精度は低く、近距離戦で弾幕を張り、精度を重視しない火器だった。しかしMP5は、当時多くの短機関銃で採用されていたオープンボルト撃発ではなく、ボルトを閉鎖した状態から撃発サイクルがスタートするクローズドボルト撃発と、ローラー遅延式ブローバック機構を取り入れたことで銃自体の振動が抑えられ、フルオートマチック(連射)時のコントロールが容易となった。このおかげで命中精度が向上し、それまでの短機関銃とは一線を画す銃器となった。
しかし高性能ゆえに高価で、部品数が多いため綿密な整備が不可欠で、泥や砂に弱いことから、戦場などでは信頼性が低いのが難点とされた。その上に拳銃弾を撃つのには大袈裟すぎると言う事で過剰性能と揶揄され、製造当初は必ずしも高い評価はされず、登場当時の配備は、西ドイツの部隊が中心となり、輸出も少数であった。
評価の転換から現在まで
1977年、ルフトハンザ航空のボーイング737型機が「黒い九月」を名乗るドイツ赤軍とパレスチナ解放人民戦線の混成グループ4人にハイジャックされる事件(ルフトハンザ航空181便ハイジャック事件)が発生した。ソマリアのモガティシオ空港でこの事件の対処に当たった西ドイツの対テロ部隊(GSG-9)は、MP5を装備して機内に突入、同時に世界で初めて突入時に閃光弾を使用し、テロリスト3名を射殺、1名を逮捕、人質全員をわずか5分で救出した。
この成果により閃光弾と MP5 の有用性が世界に知られ、先述の過剰性能と判断された評価も「精度を要求される、特殊部隊用短機関銃」と言う位置付けへと変化し、短機関銃の新しいカテゴリーの始祖的存在となった。
その後も度重なるモデルチェンジによって性能が向上し、H&Kのお膝元であるドイツのみならず、アメリカのNavy SEALs、デルタフォース、SWATをはじめイギリスSAS、香港SDU、韓国KNP-SWAT、日本警察の特殊部隊(SAT)、銃器対策部隊、成田国際空港警備隊、原子力関連施設警戒隊、特殊捜査班、海上保安庁の特殊警備隊、陸上自衛隊の特殊作戦群、海上自衛隊の特別警備隊など、警察系、軍事系を問わず、世界中の様々な部隊に配備されている。
また、小型版であるMP5K (クルツ) や、これをアタッシュケースに収納したまま発砲できるコッファーと呼ばれる派生型も登場し、アメリカのシークレットサービスなどの要人警護の現場で使用されている。
操作性
MP5シリーズは命中精度の高さから警察や軍が採用しているが、軍では特殊部隊以外での使用は難しいとされる。これは、ウージーやイングラムM10などのオープンボルト方式と比べ、射撃後のクリーニングを怠ると作動不良を起こす可能性が高いことからである。また多弾数発射後にはヘッドスペース(包底面から薬莢位置決め部までの間隔)の点検をしなければ銃が作動不良を起こすこともある。点検方法はマガジンの挿入口から中にあるボルトヘッドとボルトキャリアの隙間にシックネスゲージを差込み、隙間がどのくらい開いているか調べる。隙間はメーカーで指定している範囲内になければならない。
隙間が許容範囲を超えるとローラーを大きいものに交換する必要がある。そして交換可能範囲を超えた銃はそのまま使用すると暴発などの危険がある為、H&K社に送って修理するか破棄される。
主なバリエーション
MP5は主に軍や警察組織の特殊部隊に運用されていることもあり、使用者の任務と用途に合わせた非常に多くのバリエーションを持つ。
9mm×19弾モデル
- MP5…基本モデル。弾倉はストレートタイプのものを採用している。
- MP5A1…伸縮銃床型。弾倉に湾曲形状(バナナマガジン)の新形状のものが導入される。
- MP5A2…-A1の固定銃床型。
- MP5A3…MP5A1の改良型。銃身を「フローティング・バレル」化して命中精度を向上させたモデル。後期生産型はA4と同じデザイン(点射機能はない)のロアフレームに変更されている。
- MP5A4…MP5A3の改良型。点射モードが追加された新型ロアフレームが導入されたモデル。尚、点射機能は2点(2発)および3点(3発)を発注者の要望によって選択可能。ロアフレームの変更に伴いグリップの形状が変更され、ハンドガードが大型化された。また、-A1/-A2をロアフレームのみ交換することによって-A4/-A5仕様に準拠させることも可能である。
- MP5A5…MP5A4の伸縮銃床型。
- MP5F…MP5A5のフランス向けモデル。Fは“FRANCE”の頭文字から。床尾板が大型化された、反動吸収性の高い新型の伸縮銃床が導入されている。
- 日本警察に導入されたものはこの-5Fとほぼ同仕様だが、大型のフラッシュハイダーを装備し、強装弾に対応する。また、日本警察では、「警察官等特殊銃使用及び取扱い規範」第二条により、この銃を「特殊銃」と規定している。なお、玩具メーカー東京マルイが、この銃を基にしたエアソフトガンを「MP5J」の商品名で発売している。
MP5Kシリーズ
秘匿携行に特化されたコンパクトモデル。Kは Kurz の略号であり、ドイツ語で”短い”の意味。銃身部を短縮化して銃床を装着せず、保持安定用にバーティカル・フォアグリップを装備する。本体の小型化に併せ、15発装弾の短縮化弾倉が用意されている(通常の弾倉の使用も可能である)
- MP5K…基本モデル。銃床の替わりにスリングスイベルの付いた底板が装着されている。
- MP5KA1…照準器を単純な門星型にして極限までコンパクト化したモデル。
- MP5KA4…MP5A4を基体にしたモデル。点射機構を追加した4モードのセレクターを装備した新型ロアフレームモデル。
- MP5KA5…-KA4の簡易照準器モデル。-KA1のMP5A4準拠型。
- MP5KPDW…MP5Kに折り畳みストックを装備したPDW(個人防衛用装備)として開発されたモデル。MP5Kの欠点とされた「銃身が短いために銃口炎が激しく、全自動射撃にすると照準が困難」という点に対応するために大型のフラッシュハイダーが装着されている。PDWとしては、後に専用弾を使用するMP7が開発された。
- MP5RAS…ナイツアーマメント社とH&K USAによる共同開発。ナイツ社のRAS(レイル・アタッチメント・システム)を搭載し、アクセサリーによる発展性を持たせたモデル。MP5PDWに搭載されている折り畳みストックを装備。
- MP5Kコッファー…MP5Kをアタッシェケースに入れ、そのまま発砲できるようになっている偽装モデル。平時の要人護衛等、露骨に銃火器を携行している事を示さない用途向けに開発された物で、見た目は鞄そのものでしかない。取っ手の左側にトリガーがあり、左側面に銃口穴がある(初弾を発砲するまでは偽装の為に閉塞されている)。またそのまま使用すると銃口炎で鞄部分を焼いてしまう為、フラッシュハイダーが付く。鞄に格納した状態で射撃を行うために、照準器を使わなくとも狙いをつけられるよう、曳光弾を使用する。
MP5SDシリーズ
特殊部隊向けに内装式サイレンサーを装備したモデル。”SD”とは Schalldämpfer の略号で、ドイツ語で消音器を意味する。
- MP5SD1…MP5A1のSD型。銃床を装着せず、MP5Kと同じスリングスイベル付底板が装着されている。
- MP5SD2…MP5A2のSD型。固定銃床モデル。
- MP5SD3…MP5A1のSD型。伸縮銃床モデル。
- MP5SD4…SD1のモデルチェンジ型。MP5A4を基体としたモデル。点射(バースト)モードが追加された新型ロアフレームを装備。
- MP5SD5…MP5SD2のモデルチェンジ型。点射モードが追加された固定銃床モデル。
- MP5SD6…MP5SD3のモデルチェンジ型。点射モードが追加された伸縮銃床モデル。
HK94シリーズ
- HK94…MP5の民間向けモデル。フルオート機能がなく、法的に「ピストルカービン」(銃身を延長して銃床を装着した拳銃)扱いとするため銃身が伸ばされている。ロアフレームはHK91に似た独自のものを採用している。
- MP5SF…HK94の公的機関向けモデルで、FBI等フルオート射撃を禁じられた機関向けのMP5とも言える。”SF”はSingle Fire、単射(型)の略号。銃身長及び銃床形状にいくつかのバリエーションを持つ。ロアフレームはHK94と異なり、通常のMP5をセミオートのみとした「FBIトリガーグループ」を採用している。
- SP89…MP5Kの民間向けモデル。フルオート機能がなく、法的に拳銃扱いとするためバーティカル・フォアグリップが無い。こちらのロアフレームも、HK94同様のデザインをしている。
MP5シリーズはロアフレームを個人レベルの作業で交換できるため、フルオート機能のないHK94でもフルオート機能のあるロアフレームさえ入手できれば軍/公的機関用と同じフルオート型に容易に改造できる。そのため、現在では民間向けモデルにはロアフレームが交換できないように設計を変更されたものが供給されている。旧型のロアフレームを持つHK94は、米国の銃器規制下では民間人は所持出来ない。また、HK94、SP89をMP5、MP5Kに改造し民間に販売する行為も、専門の資格を持ったガンスミスによる改造であっても1986年の規制強化(FOPA86)により禁止となっている。
10mmAuto弾モデル
- MP5/10(MP10)…9mmX19弾よりも威力の高い10mmオート弾を使用するモデル。オリジナルの9mm型とは違いボルトストップを装備する。合成樹脂製の半透明弾倉が外見上の大きな特徴。固定銃床型と伸縮銃床型があり、それぞれMP5A2/A4及びMP5A3/A5を基体にしている。10mmオート弾がセールス的に成功しなかった事を受けて、2000年には生産・供給は中止された。
.40S&W弾モデル
- MP5/40…MP5/10を.40S&W弾(10x22mm Smith & Wesson)が使用出来るように改設計した大口径モデル。MP5/10と同じく大型の合成樹脂製半透明弾倉を持つ。.40S&W弾の使用を前提に設計されたH&K UMP40が開発されたために2000年には生産・供給は中止された。
.22LR弾モデル
- H&K社がオフィシャルに製作したものではないが、個人のホビーユーザー向けに幾つかの.22LR弾コンバージョンキットが存在した。
なお、ドイツの German Sport Guns 社が、外見がMP5そっくりで.22LR弾を使用するen:GSG-5というセミオートマチック銃を製作販売している(銃器のカテゴリとしてはピストル、あるいはセミオートマチックライフルに相当する)。製品名のGSGは German Sport Guns から取られている。基本形のAのほか、長銃身のL、ピストル型のP、Pを短銃身化したPKなど、MP5の各バージョンに対応した商品展開がされている。GSG-5は外見こそMP5そっくりではあるものの、部品は全てGSG社が独自の図面で製造しており、MP5との共通部分は皆無である。ただし、MP5の遊戯銃のアクセサリーを流用できるという。
運用国
スペック
MP5
- 全長:680mm(固定銃床型)
- :700/550mm(伸縮銃床型、延伸時/縮小時)*MP5Fは除く
- 重量:2.54kg(固定銃床型)
- :3.08kg(伸縮銃床型)*MP5Fは除く
- 口径:9mmX19
- 装弾数:30発(標準型弾倉使用時)
MP5K
- 全長:325mm
- :603/368mm(MP5KPDW、銃床展開時/折畳時)
- 重量:2.0kg
- :2.78kg(MP5KPDW)
- 口径:9mmX19
- 装弾数:15/30発
MP5SD
- 全長:790mm(SD2/SD5)
- :805/670mm(SD3/SD6、銃床延伸時/縮小時)
- :550mm(SD1/SD4)
- 重量:3.10kg(SD2/SD5)
- :3.60kg(SD3/SD6)
- :2.80kg(SD1/SD4)
- 口径:9mmX19
- 装弾数:30発(標準型弾倉使用時)
登場作品
MP5の遊戯銃
複数の企業から発売されている。多くのバリエーションを持つMP5シリーズを再現するため、外装を変更するオプションパーツも商品化されている。ライト付きハンドガード等、合法的に入手可能な実物用オプションパーツもあるが、遊戯銃は機構上の制約等の理由で実物と寸法が異なる箇所もある。
- 東京マルイ製電動ガン
- 電動ガンシリーズ初期の1992年に登場してから、モデルチェンジとバリエーション展開を続け発売されている。MP5A5、MP5A4、MP5SD5、MP5SD6、MP5J、MP5RAS、MP5KA4、MP5KA4PDWがモデルアップされている。電池格納スペースの関係上、MP5K系とそれ以外では設計が異なる。
- エスコート(ユースエンジニアリング)製ブローバックガスガン
- 総アルミプレス製本体のMP5A5がモデルアップされている。1997年に発売。ASCSメカを作動機構とし、外部ソースで動作する。強い反動を発生させ、グアム警察SWATが訓練用機材として採用していた時期もあった。ユースエンジニアリングが遊戯銃から撤退後、2006年よりエスコートから可変ホップアップシステムや上記の電動ガンとの弾倉の互換といった近代化改修の施されたものが発売されている。また、同社はMP5A5のカスタマイズとして、後述のJAC製BV式ガスガンとのニコイチによるMP5A3、SD3、SD6の製作も行っている。
- マルゼン製ブローバックガスガン
- MP5Kとそのカスタムガンがモデルアップされている。アドバンスシュートシステムを作動機構とし、パワーソースはリキッドチャージ式。実物と異なり、機関部はオープンボルト方式。
- SYSTEMA製電動ガン
- M16/M4系に次ぐトレーニングウェポンシリーズ第2弾として「TW5A4」の名でMP5A4が2008年に発売。訓練用機材としての使用を前提とした設計となっている。セミ・フル・バーストの各発射モードを電子回路とセンサで制御している。
- ファルコントーイ製エアコッキングガン&BV式ガスガン&電動ガン
- トイガンとしてのMP5を日本で初めてモデルアップしたメーカー。初代はツヅミ弾を詰めたプラカート式手動エアコッキングガンのMP5K。フォアグリップを利用してコッキングする為、フォアアーム前方が長い。その後、ケースレス化したMP5SD3が登場。後にBV式ガスガン、電動ガンも開発した。
- JAC (トイガンメーカー)製BV式ガスガン
- 1980年代末に登場したガスガン。MP5A2,A3,A4,A5,SD2,SD3,SD5,SD6をモデルアップしていた。BV式の特性から、サプレッサーを取り付けると発射音が無音に近くなる。先述のユースエンジニアリング製ブローバックガスガンにグリップフレーム、フロントサイト、ハンドガード、スライドストックが流用された。
- デジコン製BV式ガスガン
- JAC倒産後、新たに登場したガスガンメーカー。1995年頃よりMP5A5をモデルアップしていた。JAC製品の流用ではなく、すべて新規金型であった。樹脂製サブチャンバーのBV式メカニズムを持つ。弾倉はエアー給弾式で装弾数は153発。左側面の流量調整ネジでパワーと回転数の調整が可能だった。当時の広告にも表示されていたが発射エネルギーが大きく、現在では改正銃刀法規制対象の可能性がある。90年代末に既に生産中止となっている。
関連項目
外部リンク
- Heckler & Koch - ヘッケラー&コッホ社公式サイト
- GSG-5特設サイト
- MKEK - MKE社公式サイト
カテゴリ: 書きかけの節のある項目 | サブマシンガン
